後悔の記憶

日常と心
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“もう一度やり直したい”

そう思ったことはあるだろうか。

僕は今まで数え切れないほどの後悔をしてきた。「しまった!こうしておけばよかった!」と思う程度の小さな後悔から、思い出すだけでも胸が張り裂けそうになるほどの大きなものまで、僕の人生は後悔の連続だったと言ってもいいだろう。

だが、不思議なことにもう一度やり直したいと思ったことはないのだ。

後悔や失敗をするということは、それだけ人生を歩んできた確かな証だと、そう思おうとしてきたからかもしれない。

だから僕にとっての後悔は、必ずしも悪いものではない。

だが最近になって、”心の底からやり直したい” と思ってしまうほどの、後悔をせずにはいられない出来事があったのだ──

僕は最近引っ越しをしたのだが、新しい家で荷物の片付けをしている時に、ふと目に留まった物があった。

──それは一冊のアルバムだった。

どうやら小学生の時のアルバムのようだ。

僕は懐かしくなって手に取ってみた。

ページをめくってみると、小学生の時の自分が写っている。

少し複雑な感情でそれを眺めると、今度は卒業文集のページをめくった。

何気なくその文集を見ていくと、ある人物の作文が目に留まった。

僕はそれを読み、そして愕然とした。

それはずいぶん前に疎遠になった僕の幼馴染の卒業文集だった──

僕には幼馴染がいた。

彼とは、僕が物心つく頃にはすでに一緒にいたように思う。彼のことを僕は「ゆうくん」と呼んでいた。

幼稚園の頃、僕たちは常に一緒に遊んでおり、その頃は何も気にする必要がなく、本当に楽しかった記憶がある。

やがて小学生になり、僕は”喋ることが出来なくなった”

家族や、ゆうくんと2人だけの時には喋ることが出来たが、それ以外の他人には、声を出すことが出来なかったのだ。

なぜ喋れなかったのか──

それは自分でもわからない。

けれど、僕は小学校の6年間、誰とも言葉を交わすことはなかった。

学校で誰かに話しかけられても、首を縦に振るか、横に振るかで意思表示をしていたのだ。

必然的に僕は学校で孤立していた。

“変な人間” としてある者には敬遠され、ある者には嫌われていた。

自分で思い返してみても、それはそうなるだろうと思うような少年時代だった。

そんな僕にも、ゆうくんは変わらずに接してくれていた。それどころか、喋れない僕のことをクラスメイトに説明してくれて、なんとか僕のことを理解してもらえるようにしてくれていたのだ。

彼は僕にとって唯一の友人だった。

──だが

その関係も僕たちが小学5年生になったある日の出来事がきっかけで、終わりを迎えることになる。

その日、僕は偶然聞いてしまった。

ゆうくんとその友人が、僕のことについて話しているところを。

その友人はこう言っていた。

「なんであんな奴と一緒にいるんだ?あいつただの馬鹿だし、一緒にいても何も意味がないだろ」

僕は他の人間からそういう風に思われていることは知っていた。

だけどこの時は──その言葉を聞いた瞬間、まるで自分は友人を作る資格はないのだと、やはり自分は他の人間とは違い、どこか人として欠けているのだと、そう言われたような気がして、その場にいることができなくなり、僕は逃げ出した。

ゆうくんはその時、その友人になにかを言っていたようだったが、僕がそれを聞くことはなかった──

その日から、僕はゆうくんを避け始めた。

彼は変わらず話しかけてくれていたが、僕が彼を遠ざけたのだ。

自分には彼の友人でいる資格はないと、自分と一緒にいても何も意味はないのだと。

そして──そんな自分がとても惨めで、誰かと一緒にいると劣等感に押し潰されそうだった。

次第に彼が話しかけてくることは少なくなり、僕たちは一緒にいることがなくなった。

僕はそれ以降、友人と呼べる友人ができることはなかった。

だからこそ、僕の中に彼の存在はいつまでも残っていたし、僕の方から遠ざけてしまった罪悪感が、心の奥底で燻り続けていたのだ──

そんな彼の卒業文集を、数十年経った今になって読むことになるなんて、最初は偶然だと思った。

だが、僕の中にある後悔や罪悪感が、無意識に彼の文集のページを開かせたのだろうと思うと、あながち偶然でもないのかもしれない。

彼の卒業文集の題名は、僕のことについて書かれていた。

その内容はこうだ。

彼にはたくさんの友達がいた。

その友達は三種類に分かれていて、一つは笑いをとる面白い友達。二つ目はツッコミを入れる友達、三つ目はその流れに乗る友達。彼はそれに気づいたと書いている。

だが、その三種類の内のどのカテゴリーにも属さない友人がいた。

それが僕だった──と彼は卒業文集に書いていた。

彼は僕のことを本当に面白い人間で、色々なことを僕から教えてもらったと、そう書いていたのだ。

卒業文集を書き始めたのは、彼と疎遠になった後からだった。

つまり、彼は僕に避けられて、ひどく傷ついていたにも関わらず、そんな文集を書いたのだ。

それに気づいた時、僕は激しい後悔に襲われた。自身のことしか考えず、彼を遠ざけたことを。

できることならば、やり直したいとも思った。

だがもう後の祭りだ。

彼が今どこで何をしているのか、僕には知る術はない。

この後悔は今後も僕の中で燻り続け、やがて未練となるのだろう。

だが、もしも未来で彼と再会することがあるのならば、その時は、あの頃の謝罪をしたい。そして二人で酒を酌み交わし、長かった空白の話をしたいと思う。


あとがき

今回は僕の幼い頃の後悔の話を書いてみました。

小学生の頃、クラスメイトが僕の悪口を幼馴染に話している場面をたまたま目撃してしまって、それから僕達の距離が徐々に開いていきました。

今の僕であっても、何が正解で後悔しない道なのかは分かりません。ですが、これまでの経験を踏まえて考えることはできるので、自分が一番後悔しない道を今は歩んでいるつもりです。

彼とまたどこかで再会することがあったなら、あの時のことを謝りたいと心の底から思います。

この話を読んでいただき、ありがとうございました。

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