
バセドウ病を発症した僕は、絶望と葛藤の末、彼女という光に救われた。
そして──
彼女と生きることを決意した僕は、彼女にプロポーズをし、晴れて彼女と夫婦になった。
その生活は幸せなものだったが、僕の病であるバセドウ病は、今も変わらずに僕たち夫婦を苦しめている。
薬は確実に飲んでいる。
定期的に、病院で検査する甲状腺ホルモン数値も安定している。
それなのに──
なぜか身体の疲労感は抜けない。癒えない。
僕の仕事は大工だ。
身体を酷使する仕事である。
そのうえ建設業界は土曜日も仕事で、休日は一日しかない。
当然、今の僕の身体では、日毎に疲労が溜まっていく。そんな状態では、安定して働き続けることは難しい。
彼女との生活が懸かっているにもかかわらず、未だに僕の身体は思うように動いてはくれない。
正直これは予想外だった。
薬を飲み始めて二年。その間、ホルモン数値は常に安定していた。
最初はまだ、安定して間もないから、身体が辛くとも時間が経てば良くなっていくと思っていた。
だが、実際は二年経った今でも身体の症状は治らず、さらには僕自身、とても怒りっぽくなるなどの精神症状が顕著になっていった。
僕は仕事から家に帰ってくると、妻と一緒に晩御飯を作っている。
妻は在宅ワークをしていて、僕が家に帰った時にも、仕事をしていたりする。
そんな時には、僕だけに負担をかけさせまいと、仕事を一時中断して一緒に料理をしてくれるのだ。
そのうえ妻が早く仕事を終えた日は、妻がほぼ全ての家事を終わらせてくれている。
ほんとうに感謝している。
そんな優しい妻に対して、僕は些細なことで苛立ち、怒りをぶつけてしまう。
そして夫婦喧嘩に発展する。
時には、それが激しいものにもなってしまう。
病気になる前の僕は、こんなに怒りっぽくなかった。もっと感情をコントロールできていたはずだ。
それが──まるで感情の波を堰き止めていた防波堤が、崩れ落ちて失くなってしまったかのように、感情が抑えられなくなってしまった。
──治るどころか、悪化していないか?
いつしか僕は、そんなことを思うようになっていた。


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